女喰い聖書・企画2006年4月4日
【寧々テキスト〜第十二話〜】




■2001年4月19日・更新 <第十二話>

『止まらない気持ち』

届けたい言葉はたくさんあった。話さなければならないこともいっぱいあった。だが、それより先に気持ちを伝えたくて。自分の胸が焼けそうなほど熱くなっているのを感じていた。

「お化けじゃねぇよな?本物だよな?」

立ち上がり様に言うと寧々の方へ歩み寄っていく。

「何、馬鹿なこと言ってるの?足、あるだろ」

華奢な片足を少し上げる仕草を取り、苦笑する寧々。また1つ、新しい表情を発見した俺はというと、歩み寄る足が止まらない。一歩、また一歩とだんだんと寧々へ近づいていく。近づかれて戸惑っている、寧々を見つけたところで、自分自身が制御できるはずもない……

「好きだ」

瞬間、情熱が身体をますます駆け回った。上がりすぎた気持ちに呑まれていることは確かで。

「ぁ……」

寧々の顔が驚きに染まっていった。

「止まらねぇよ。お前にどんどんハマっていく」

こんなキザっぽいことを心の奥底から言えた自分がとても不思議で。いつもなら、もっと計算高く、用意周到で、石橋は叩いてから渡る性格のはずなのに。今日一日で恋に落ちた俺がいて、いや、もしかしたら初めて出逢った時から。どちらにしても、恋してることは揺るぎない事実で。だからここまで…

「らん――」

驚くばかりの寧々はそこに固まったまま。

まずは話さなければいけないことも話さないままに。2段飛ばしで階段を一気に駆け上がるように。一方的なことを言う俺は、両手を差し伸べ、寧々の身体を強く引き寄せて――

……………。

ぎゅっと抱きしめた。

「…………」

目を丸くした寧々は、強く抱かれる中、硬直するばかりで何も言えないでいる。

「……好きだ」

もう一度、一方的で、そして素直な気持ちを口にした。

「な……。――何、言ってんだよ、こずえは友達だって言ってんだろう」

ようやく応じるようになった寧々は言い返してくる。しかし、その声は、震えているようだった。

「うるせー、お前が好きだ」

「……ダメだよ。私には出来ないよ」

「好きだ」

一方的に気持ちを伝えてくる俺に、寧々は戸惑うばかりで。

「…………」

「…どうしてもか?」

「……なんで?」

「…どうしてもダメならあきらめる」

「……え」

「やることはやった。悔いはねぇよ。ダメならあきらめる」

真剣な眼差しで見つめてくる俺を目の前にして、寧々は戸惑いと怪訝が混ざった目で見つめ返すと、すぐに伏せ、か細い声で、

「……ヤダ。あきらめないで」

何かを決心したように。

「…こずえには、寧々のことが好きだ。って、言ったよ」

「……うん」

二人の口唇が、触れ合った。