女喰い聖書・企画2006年4月4日
【寧々テキスト〜第十四話〜】




■2001年4月19日・更新 <第十四話>

『鉄と女は熱い内に打て』

好きになった女を初めて抱く。

男がこれほど興奮し、緊張することはないと思われる。とびっきりの謎を名探偵が解くように、俺はこれから寧々の身体という名のとびっきりの謎を解いていく。どんなアエギ声を出し、どんな表情を見せてくれるのか。乳房の形は。柔らかさは。肌のスベリ心地は。濡れ具合は。締まり具合は。求愛の仕方は。考えるだけで副腎髄質からアドレナリンが大量噴出しだす。寧々の柔らかな口唇と弾力のある小さな舌を味わいながら、胸のふくらみに手を添えると

「ぷはっ…ちょ、ちょっと待って」

口唇を引き剥がすと、頬をほってりピンク色に染めた顔をうつむき言った。

「やっぱり…」

俺は全ての言葉を言い切る前に寧々の口唇を口唇で塞ぐ。言いたいことは想像できたからだ。何度も何度も口付けを交わした間柄まできて、それを否定するような、考えを改めるようなことを言うのは”こずえ”のことでしかないと思った。寧々とこずえ、俺を中心として二人の間にどんなやり取りがあって、何を持って”友達を裏切る”ことになるのか深いところまでは知らない。が、今更のこの寧々の態度が、どれだけ”深い”かを物語っていた。

”やっぱり、私には出来ない”

”やっぱり、友達のままでいましょう”

今日一日、寧々の可愛らしさを見せ付けられ、好きになってしまった俺にとっては、今、最も聞きたくない言葉No.1であることは間違いなしである。あいにく俺はそう物分りがいい方ではない。優しい男だったら寧々の”深い”部分を理解しようとするのだろうけど、そういう優しさは俺にはない。その優しさによって寧々を逃がすのがとても後悔するとわかっているからだ。

鉄と女は熱い内に打て。

女が迷っている時に、はいそうですかと素直に答えを待ってみてもいい返事は返ってこない。逆に独断で道を示すと女は覚悟が決めやすいものなのだ。数々の女性経験から得た俺の教訓が今の行動に出ていた。

だからそんなセリフは言わせない。口唇を塞がれた寧々は力なく舌と舌の行き交いに応じている。しかし多少強引に口付けをされたとしても言おうとした言葉を言おうと思えば言える状況でもある。なのに舌が応じているのは、迷いがある証拠だ。

鉄と女は熱い内に打て。

もう一度、俺自身の教訓を心で強く思うと、寧々のほっそりとした首筋に口唇を滑らせ、もう1度、胸のふくらみに手を添える。切ないため息を漏らすのは寧々で、その後、何かを言おうとすることもなく身を委ねてくれた。俺はアドレナリンでいっぱいに満たされていた身体が思うまま、寧々を何度も何度も抱きまくった。これが後に俺と寧々を最悪の状態で引き裂く原因になっていくとも知らずに。