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女喰い聖書・企画2006年4月4日 【寧々テキスト〜第二十一話〜】 <第二十一話> 2001年5月27日の日記リニューアル 『大阪初夏の陣・A』 五月といえば一年に一番紫外線が強い時期だと誰かが言ったことに対し「夏が一番紫外線強いに決まってるじゃん。だって一年で一番暑い季節だし」なんて根拠も何もないただの憶測で噛み付いたことをフト思い出した。だが、このジリジリと降り注ぐ五月の太陽光を肌で感じてみれば、なるほど正しいじゃないか。要するにこんなに小さな過去を急に思い出すくらいクソ暑いってこと。本当にマジでとにかく暑い。 しかも暑さを感じれば感じるほど俺の心も穏やかなものになくなっていき、寧々が遅刻してこなければこんなに汗だくになることもなかったろうに。とか。浮気疑惑まで浮上かよ。とか。寧々を恰好の責め台としていった。もちろん自分はさて置き…である。特に浮気疑惑に関してはそうだ。 そして―― 待つこと1時間。寧々から電話がかかってきた。 「もしー!今ドコにいるの?」 「お前こそドコだよ?」 「待ち合わせ場所。らんの姿見えないけどー?」 「あったりめぇだろ!何度かけても電話にでねェから、お前ン家まで来たよ!」 「あ。ほんとにー?ちょっとまって今からタクシーでそっち向かうからー♪」 「ああ」 「…なんか怒ってない?」 「怒ってねェよ。切るぞ」 むろん――怒ってた。 もしこれが家電(いえでん)だったら、怒りと等しい大きな擬音とともに回線を切ったであろうに。そんなことを思いながらポケットにしまおうとすると寧々から再度電話がかかってくる。 「なんで切るのー?」 この空気を感じていないのか、それとも無視しているのか。さっきと変わらぬスットンキョンなトーンの声。 「タクシー乗ったんだから別に話すことねぇだろ。切るぞ」 「ヤダ。らんに逢うまで話す♪」 電話切る。こんなにまでイライラさせといて何、甘えたこと言ってんねんって感じだ。 するとまた電話がかかってくる。 ↓ シカト。話す気ゼロ。 ↓ コールが鳴り止んだと思ったら、すぐにまた寧々から電話がかかってくる。 ↓ シカト ↓ 鳴り止む。すぐに寧々から電話。 ↓ シカト ↓ 電話 ↓ シカト ↓ 電話 こんなことを数十回は続けている内に根負けした俺は電話に出てみる。 「話すって言ってんだろうが!」 逆ギレかい。 「なんでお前が怒るんだよ…」 「あは♪ごめんね。あ…着いた。ちょっと待ってて」 俺が立っていたコンビニ前に止まったタクシーから仕事着(派手な白スーツ)に身を包んだ寧々が降りてきた。俺を見つけると大遅刻や浮気疑惑などドコ吹く風で、とびきりキュートなスマイルを咲かせた思うと飛びつき抱きついてきて、 「らんちゃ〜〜〜ん♪逢いたかったよ☆」 と、きたもんだ。 不覚にも「可愛い」と思ってしまった俺は、 それまでのイライラやモヤモヤが全て吹き飛び、遅刻…?まぁ、元はといえば俺が急に逢いに来たっていうのもあるしな。どうしても外せない予定とカブってしまったってことも有り得るわけだし。今回は大目に見てやろう。浮気疑惑…?あの男の声は俺の聞き間違いかもしれないしな。大目に見てやろう。という結論に0.5秒で到達した。 「おっせーよ。ばーか(照)」 「逢いたかったぁぁぁ」 「うわっ!お前、マジで酒くさっ!」 「だって今までちょ〜飲んでたんだもん。あは♪」 「離れれ」 「ヤダ!…まずやることあるでしょう?」 「やることなんかねぇよ」 「ブゥ。…逢ったらまずチュ〜だろ?」 「………」 「あははは!はやく♪はやく♪」 ここで素直にキスしてしまう「お前、どんなだけ甘いんだよ」的な俺なわけで。ま。誰になんと言われようが俺はこれでいいのさ。許す。全て許す。だって遅刻とか浮気疑惑よりも逢えた喜びの方が大きかったもんね。だから仕方がないだろう?これも遠距離が成せる技か。距離と愛しさの前には大抵のことが許されてしまうんだ。少なくともそう悟ってしまった。だから、俺は許す。 ――――はずもなく。 「テメェ…そんなことより、先に言うことがあるだろうが…アァ?」 寧々の手首を思いっきり掴んだ俺は、今までのイライラやモヤモヤを全て解消すべく掴んだ手首を寧々の肩上まで持ち上げて睨みつけた。寧々は驚いた顔でしばらく俺を見つめ、怒り心頭のオーラに気がついたのか、目を伏せると、 「…ご、ごめんなさい。こんな時間まで待たせて…反省してます…」 涙目ながらに謝った。これで俺的には遅刻の件に対して決着がついたので許す。後腐れもない。なぜ遅れるのわかってて連絡してこなかった類のさらなる追求は、過ぎたこととして既に終わっていてどうでもいいことなのでしないのである。 「い…痛い…」 眉間にシワを寄せて苦しむ寧々を開放し、 「さっさと部屋行くぞ」 と、捨てセリフに近い形で言い放って一人サッサと歩き出した。残るは浮気疑惑の追及だけだな。さて、どうするか――。黙々と歩く俺に付いてくる形の寧々を背中で感じながら、ぜってぇー他の人より少ないであろう脳みそをフル回転していた。 |