女喰い聖書・企画2006年4月4日
【寧々テキスト〜第三十五話〜】




<第三十五話> 2001年6月29日の日記リニューアル 


『愛と憎しみの始まり・E』

「麻衣子が手首切っちゃったんだけど!!」

「…………」

絶句。とは、まさにこのことで、俺はしばらく声が出せないでいた。麻衣子がリスカって…なんで?――その理由を片っ端から考えるだけで頭の中が一杯で。声を出せ、という命令が脳から伝達されるには時間がかかったのである。

第一に考えたのは「俺の責任だ!」である。麻衣子と付き合ってきて麻衣子の性格から考えるに、麻衣子はあのストーカー事件以来、後遺症というべき「夜中、少しの物音でも聞くと情緒不安定になる」に犯されていて、その心の唯一の拠り所が解決に力添えした俺であった。

夜な夜なの電話で話しをすることによって落ち着いたり、落ち着かない場合は麻衣子に会いに行く…本人も俺に迷惑をかけてしまって情けないと思っているようで、それに負けず嫌いという性格も加わることで、なるべく早くこの後遺症を克服するんだと頑張っていた。

その矢先、

突然俺と連絡が取れなくなってしまった。すると…溜まりに溜まった情緒不安定が爆発して、こんな自分がたまらなくイヤになり自傷行為に走った…という「これって完璧に俺の責任だ」シナリオが頭をよぎった。でもこれしか考えられない。麻衣子という女性を見てきたからこそ他のシナリオが浮かばない。”かまってちゃん”的な性格でもないし。あ、余談だがリスカは彼女の人生初の行為である。

「…もしもし!?」

電話の向こうでは聞き覚えのまったくない女性が話しかけてきている。麻衣子の友達だろうか。

「…聞こえてるんでしょ!?」

「うん…」

覇気の無い返事をした俺には言いたい言葉があった。

「ごめん。俺は行けない」と。

寧々との愛のために他の女性との関係を完全に断ち切っているからだ。それはどんなことであろうと破ることが許されない愛のルールで、破ることはすなわち寧々との愛を裏切ることになる。明日、というか今日、その愛は終わりを告げるというのに、こんな状況でも俺は、愛を貫き通すんだと。

「………」

言葉が……出ない。

シビレを切らしたのは電話の向こうの女性でその剣幕が想像できるほどの大きな声で怒鳴りつけて電話を切った。

「アンタ、麻衣子の彼氏だよね??麻衣子がこんなになっちゃったのに黙ってるつもり??サイテーだよ!!ナメじゃねぇ!!

電話の切れた効果音だけが耳に鳴り響き、それを数秒聞いてから俺はそそくさと布団を被った。

「これでいい」

友達らしき女性が麻衣子の側にいてくれてるようだから、なんとかしてくれるだろう。俺は愛のルールを守り通した。これでいい。これでいいんだ。

そう呟くと俺は眠りについたのだった――。

































































…本当にこれでいいのか?



愛はすごいね。

まず寧々以外の女に興味がわかなくなるもんね〜〜〜

え?寧々以外の女性とセックス?…有り得ない!俺の心と身体は愛する人だけの物ですから。そして寧々の心と身体も俺だけの物ですから〜〜〜

所詮、愛を知らない野郎の戯言だよね。気まま野郎なのは〜〜〜

寧々への電話の回数は増えたね〜〜〜

門限も自分で作ったんだ。あまり夜中まで遊んでいると寧々が心配しちゃうでしょ?〜〜〜

寧々にも門限を作ってあげてはどうか?そうすると俺も安心するわけだし。お互い安心できる状況を作るってやっぱ大事じゃん?〜〜〜

男友達と遊ぶの禁止でしょやっぱ。俺も女と遊ばないし。いつ浮気になっちゃうかわかったもんじゃないからなー。芽は潰しておかないとねー〜〜〜

安心して愛し合っていける〜〜〜

アイツ、約束を破った上に連絡がつかないなんてどういうこと?〜〜〜

約束破った上に誰かといるんだ〜〜〜

別に俺のこと実は好きでも愛してもいないんだ〜〜〜

ルールももっと増やして厳格にしねぇと〜〜〜

アイツも俺のようにに一途になってもらわないとこのムカツク感情は治まりそうにない〜〜〜

願望から少しのズレが生じると言い合いの喧嘩になる構図〜〜〜

俺の責任だ〜〜〜

破ることが許されない愛のルール〜〜〜

麻衣子がこんなになっちゃったのに黙ってるつもり??〜〜〜

これでいい。




こんな状況でも俺は、愛を貫き通すんだ。




























































車のキーを手に取ると俺は麻衣子の元へ急いだ。